地元広報誌「うえまち」コラム連載中!もし、我が子が不登校になったら?

第60回

相談事例(33) 「褒めなさいと言われているけれど?」

 私の相談室へ来られる親御さんは、過去にスクールカウンセラーや自治体の相談室でわが子の不登校についての相談を経験されているかたも大変多くおられます。何度も通い困っていることをじっくり聞いてもらって日々のいら立ちを抑えられたという方もいれば、カウンセラーに励まされくじけそうな気分から救われたという方もおられるのですが、カウンセラーの助言に対して具体的にどうすればいいのか戸惑う方もおられるようです。「子どもに寄り添って!」とか「子どもを見守って!」という助言も何かしら抽象的な面がありますが、「もっと子どもさんを褒めてあげなさい!」と言う助言には、親御さんも戸惑いを隠せないようです。
 毎日のゲーム三昧、パジャマ姿のままの生活、不規則な食生活などをまのあたりにして、いったい何を褒めればいいのと思ってしまうのも当然かもしれません。親御さんから見てわが子の生活は、何かしら現実からの逃避に見えてしまい、呑気にこのままでいいようなことを考えているようにうつるからでしょう。日常の生活に褒めるようなことが見当たらないというのが親御さんの本音でもあります。
 確かに、具体的に何かを褒めようとすること、褒めることを探そうとすることは、親御さんにとってもプレッシャーになるのかもしれません。ならば、視点を変えて親御さんの気持ちを伝えることに頑張って欲しいのです。伝えるべき気持ちは「嬉しい」「ありがとう」です。
 食生活の細いわが子がいつもより食べてくれた時、「たくさん食べれたね」と言うのは中高生に対してはやや違和感がありますが、「たくさん食べてくれて嬉しいわ」「おいしく食べてくれてありがとう」は普通の会話です。そのお母さんの気持ちと明るい表情に、そして普通の出来事をお母さんが喜んでくれていることに子どもは安心感を覚えます。不登校生にとって自宅で少しでも快適に過ごせるようになることは、復学へのたしかな一歩であることはこの連載でも何度も触れています。わが子の言動に嬉しいと思えることやありがとうと言えることは、日常のなかにたくさんあるはずです。褒めることが難しいと感じるなら、素直に気持ちを言葉にしてはどうでしょうか。

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