地元広報誌「うえまち」コラム連載中!もし、我が子が不登校になったら?

第71回

相談事例(41) 「我が子も8050問題になるかも?・・・」

 元農水省事務次官による長男殺害事件は、8050問題として世に衝撃を与えました。80代の親御さんが収入のない50代の引きこもりのわが子を抱え続け、その解決に糸口が見いだせない状況にあるといるというのが8050問題であり、7040代世帯もこの問題に近づいているわけですが、実は40歳以上のこのような引きこもりはなんと61万人以上いると報告されています。中高校生の不登校のわが子を前にして、この事件後、わが子もこのままずっと引きこもってしまうのではないかと、その心配の声は日増しに高まってきています。
 40歳以上で引きこもっている人の過去の不登校経験(中・高校にて)は、10年以上前までは確かに高い割合を占めていました。しかし、近年はその割合が激変し、統計によると30%に過ぎないともいわれています。つまり、過去に不登校経験があるが故に中高年になって引きこもる可能性が高いとも言えなくなってきているのです。
 今、その原因は就労経験の失敗にあるのではと言われています。大学などを卒業して正社員として仕事に就き、職場での人間関係などのストレスによりやむなく退社し転職する、あるいはアルバイトなどの不正規社員として働きながらも、やがて同じような問題で退社し、いわゆるニートの状態には入ってしまうのです。就労中の貯金を生活費にしながら過ごしているうちにやがてその貯えも底をつき、ついには親御さんに依存するパラサイト生活に突入します。そこから引きこもりが始まるのです。何とかしなければと焦る生活でありながら、社会人としての失敗した自己肯定感の喪失、求められていない人材という自己嫌悪、不安、不信は募り続け、新たな社会生活に踏み出すほんの少しの一歩に戸惑い続けます。
 元の農水事務次官は、専門機関に頼ることなく問題を家庭の内部にとどめ続けました。社会の支援体制は十分整っているとは言い難いですが、40年前の父親による開成高校生徒殺害事件で、自ら多様な機関への働きかけが必要であると教訓化されたはずなのですが。

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