地元広報誌「うえまち」コラム連載中!もし、我が子が不登校になったら?

第30回

相談事例⑧ 「学校へ車で送って欲しいと言うわが子」

 不登校期間が長くなるにつれて親御さんの不安や心配が増してくると、何とか登校してほしいという気持ちから親御さんは「車で学校の近くまで送ってあげるから」と登校を促すこともあるでしょう。校門の前で車から降ろして、何とか教室へという思いは理解できないでもありませんが、登校できないと言うことは実は教室に入れないということなのですから、車での送迎が何かしらの効果があるとは言えません。かえって交換条件を出して促している感があり、親御さんがまだわが子の不登校の現実を受け入れていない段階と言わざるを得ません。
 一方、中学3年生の和美さん(仮名)は中学2年生の秋から不登校です(初回相談は中三の5月、継続相談中)。お母さんは一年近い不登校期間の経過で、登校を促したり学校の話を執拗にすることはなくなりました。自宅での表情も明るくなり、精神的にも安定している状態であり、時折、「3学期からは登校しようと思う」とか「4月には行けそうな気がする」など、やや前向きな言葉も出てきており、3年生で高校進学も現実味を増し、本人に自覚が出てきたように感じるということでした。
 ある日曜日の夜、和美さんはお母さんに「明日、学校へ車で送ってほしい」と言って教科書やノートを準備し始めました。その言葉にお母さんは一瞬「登校する気になってくれた!」と嬉しくなり「分かった!」と了解しましたが、同時に、車で送ることが良いことなのか、やはり自分で行かせることが大切で甘やかしてはいけないのではと考えてしまいました。相談室に電話が入ったのは、その日の深夜近い時間でした。もちろん相談内容は、車で送るべきか自分で行きなさいと言うべきかという内容です。
 「一度送れば、ずっと続くのではないか?」「車で送迎して登校させて意味があるのか?」といろいろ考えてしまいますが、もう少しシンプルに考え、子どもが望んでいるならひとまず受け入れてほしいのです。本人が少しでも登校への意欲を見せたなら、それに寄り添いその気持ちを守ろうとすることが大切です。登校への不安、体力の衰えを抱え、それでも一歩踏み出そうとしているのですから、一般的な常識から判断するのではなく、それを応援する言動が親御さんに求められます。
 和美さんは、別室(保健室)登校ですが、週に3、4日、9月からは自分の足で通っています。

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