地元広報誌「うえまち」コラム連載中!もし、我が子が不登校になったら?

第31回

相談事例⑨ 「『魔法の言葉』ってあるのでしょうか?」

 不登校生徒への言葉かけに何かしら特効薬があるように思われており、相談に来られた親御さんからも、学校へ登校してくれる『魔法の言葉』のようなものを教えてほしいと言われることが多々あるのです。
 私はこの連載で「普通の会話」を心がけては欲しいと言い続けてきました。それらは過去の連載(相談室のHPに掲載)を読んでいただければ意図は理解していただけるとは思いますが、今回は会話の中の「褒める」ということについて触れてみます。なぜなら、不登校生徒への家庭内での対応には、かならず「毎日何かを褒めましょう」とか「良いことには大げさに褒めましょう」と書かれているのですが、親御さんは「そうは言っても、毎日も褒めることが見つからない」という本音もあり、私もそもそも褒めるということに少しの疑問を抱いているからです。
 不登校生徒には、親御さんに支えられた自身の回復が必要なことは何度も述べてきました。自信を全くなくし不安が錯綜する日々の中で、親御さんに認められ守られている自覚を得て、自宅が自分の居場所であることで精神的に安定して来れば、少しの自信を持ち始めます。その少しの自信が、「登校してみようかな?」とか「保健室なら登校できそう」などの前向きな気持ちに繋がるのです。
 確かに子育てなどでも褒めることは大切と言われています。褒めることで自信が育つということにも納得できる部分もあります。でも本当に不登校生徒は「親から褒められたい」と思っているのでしょうか?彼らは褒められたいのではなく、親から認められたい、受け入れられたいのではないでしょうか?つまり、「僕は学校へ通えてないけど、こんな僕を認めてよ!」と思い、認められていないと感じる間はネガティブな言動を繰り返してしまうのでしょう。つまり、彼らは自分の能力ではなく「存在」を認めて受け入れて欲しいのです。
 褒めることを決して否定しているのではありません。不登校生徒が弟の数学の勉強を教えたとき、「お兄ちゃんもやったらできるやん!」「数学できるってすごい」と褒めるより、「弟の勉強を見てくれてありがとう」「お母さんは教えているお兄ちゃんを見てて嬉しかった」と感謝や喜びを伝えるべきではないでしょうか?
 「自分はやればできる」という気持ちより、「誰かの役にたっている」「感謝されている」という気持ちの方が、より自信につながると思うのですが、どうでしょうか?(次回もこのテーマで)

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