第32回
相談事例⑩ 「『魔法の言葉』ってあるのでしょうか?(2)」
前号の連載で、私は「褒めること」についてやや否定的に触れたためか、「なぜ褒めてはいけないの?」というご意見を読者の方からいただきました。誤解もあり、また言葉足らずな点もあったように思いますので、今月も同じテーマで書いてみたいと思います。端的に言えば、「褒め方」あるいは「「褒める言葉」についての問題であると言ったほうが良いのかも知れません。褒めることによって子どもに育てようとしている力は、間違いなく自信でしょう。小さな自信がそのスタートです。
では、子どもの自信はどういう状況のなかで育っていくのでしょうか?それは、否定的な自分から自分自身の良さに気づいていく過程で育つものだと思います。その自分の良さの気づきは、自分が誰かの役に立っている、誰かに貢献できている自覚を持ち、また自分の持っている力を周りから確かに認めてもらうことによって生まれてくるものです。
そこでまず、自分の良さに気づかせるためには、親御さんの感謝や嬉しい気持ちを積極的にわが子に伝えなければなりません。不登校で自宅にいてゲームなどに没頭していても、頼んでおけば洗濯物を取り入れてくれたり、お母さんが仕事から疲れて戻られて忙しく夕食を準備しているとき、何も言わなくても手伝ってくれるようなこともあるでしょう。わが子のやさしさを感じる場面は、生活の中で多々あるはずです。たぶんお母さんは「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えておられると思いますが、同時にお母さんの嬉しい気持ちを忘れず笑顔で付け加えて欲しいのです。「○○してくれて、助かったわ!うれしい!本当にうれしい!」と素直にそして大げさに言ってほしいのです。高校生なら無理でしょうが、抱きしめるくらいの気持ちが必要です。「やったらできる」「えらい!」なんて言葉は必要ありません。
「ありがとう」「助かるわ」「嬉しいわ」という言葉は、子どもに誰かの役に立っているという貢献の感を抱かせます。そして、不登校で日々錯綜している子どもが、それらの言葉のシャワーを浴びて「自分は家にいても良い」という自分の存在を肯定するようになれば、自宅は不登校生の安心できる居場所となり、小さな自信も生まれ、親子の関係も改善されてくるはずです。
次回は、自分の持っている力に気づかせる褒め方について報告します。
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