地元広報誌「うえまち」コラム連載中!もし、我が子が不登校になったら?

第37回

相談事例⑮ 「大学へは入学したけれど・・・①」

 中学3年に不登校を経験し、全日制高校になんとか進学したものの、高校1年2学期に再び不登校になってしまったA君は通信制高校に転校し無事高校を卒業しました。一般入試で希望大学に合格し、晴れて大学生としての楽しい大学生活を過ごせる希望を抱いていました。しかし、科目履修登録を終え授業が始まると、受講した英語やフランス語、経済学などの授業がさっぱり分からない、ついていけないと自信をなくし欠席気味になってきたのです。 「回りの人は分かっている感じ、自分だけが分かっていない」「教授の言葉や説明がまったく不明」「こんな状態では単位が取れそうにない」と母親へ自信喪失の言葉を毎日繰り返しています。
 通信制高校からの大学進学率は年々上昇し、現在では2割ぐらいの生徒が大学に進学しています。ところが、誰もが楽しい有意義な大学生活を送っているわけではありません。残念ながら通信制高校が抱える問題がある故に、ふたたび不登校になってしまっているケースが数多く存在しています。
 その原因のひとつは、ネットなどを使うことで通学日数が極めて少ない通信制高校で卒業した生徒は、実は先生や友人とのリアルなコミュニケーション経験がきわめて乏しく、大学入学後も人との関係づくりを苦手としままキャンパズでひとりで過ごす生活を余儀なくされていることにあります。例えばサークルに入ったりすれば、「授業が難しく思っているのは自分だけではない」と先輩からの助言で救われますし、友人ができれば学食などで授業の悩みや愚痴などを話したりすることで、マイナスに考えすぎている自分に気づくことができるでしょう。高校は卒業したけれどみんなと楽しい高校生活を送っていないために、実は不登校経験を十分克服できていないままに進学しているのです。つまり、通信制高校は不登校生徒の受け皿にはなっていますが、学校によってはコミュニティーを育てるには不十分な側面を抱えているのです。
 したがって、本人と直接関わって話ができる第三者の支援が必要です。本人とのカウンセリング、あるいは大学生などのメンタルフレンドなどの手立てを講じて、考えすぎている自分に気づかせ、サークルへの参加など、大学での人とのかかわりを作る生活を促すことがとても大切です。
 次回は、通信制高校における基礎学力問題に触れながら、今回の事例報告を続けます。

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