第55回
相談事例(28)「祖父母に苛立つわが子!」
この連載で不登校でネガティブになってしまっている子どもに対して、まずは学校のことや将来のことには触れないで、普通の会話を心がけて欲しいと言い続けてきました。わが子の不登校の現実を受け入れ、親御さんの対応にも変化が出てくると、自宅での生活が徐々に快適になり、次への行動を促すことができる状況が生まれてくるものです。
中学2年の不登校の隆君(仮名)のお母さんは、相談室でのカウンセリングを経て、わが子と普通の会話を心がけ、本人の表情も明るくなってきた実感もあり、外出や自宅での手伝いなどの行動を促がせる時期が来ていると思っていました。ところが、ある日を境にまたネガティブな落ち込んだ表情になり、会話も難しい状況にもどってしまったというのです。どうもその原因は自宅近所に住んでおられる祖父母の本人への対応ではないかと思い、本人に聞いてみると「おじいちゃんが、学校のことばかり言って!」と大変苛立っているのでした。
かわいい孫が学校に通えていない現実は、70~80歳の年代の方には受け入れがたいものです。孫の今後の幸せを願うあまり、みんなと同じように通学してほしい故に、励ます意味でいろいろ言葉かけをされるのでしょう。隆君の昼食はいつも祖母が作っており、祖父母宅で昼食をとることが日常化していたにもかかわらず、ついに隆君は祖父母を全く拒否する態度をとるようになってしまいました。お母さんが祖父母と話をしようと試みても、今までの子育てを非難されたり、隆君が現実から逃げている弱さだと決めつけられたりという結果に終わってしまっています。
お母さんが祖父母と話を続け理解を得ようと努力されることはもちろん必要ですが、その間は、本人の自宅での生活がやや快適になるまで、祖父母を拒否する気持ちを受けとめ、「おじいちゃんも心配してくれているのに」と本人に祖父母宅での昼食などを勧めたりはしないほうがベターです。祖父の言葉を聞き流せるほどのゆとりは本人にはありません。関係がうまくいっていない間は、関係を作ろうという本人への働きかけは、かえってプレッシャーになるのです。隆君は通学しないことで「僕のしんどさを分かってよ!」と無言で訴え続けているのですから。
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