地元広報誌「うえまち」コラム連載中!もし、我が子が不登校になったら?

第56回

相談事例(29)「私(母親)の会社に何度も電話してくるわが子!」

 裕貴君(仮名)は中学2年生、7月から不登校です。両親は共働き、母親は9時~17時のパートに出ています。自宅での裕貴君はゲーム三昧の毎日です。外出する機会も乏しく、母親との会話もまだいわゆる普通の会話が日常的にかわされているわけではありません。つまり、やや快適な居心地が自宅にあるわけではなく、ネガティブな雰囲気が家庭全体にも漂っています。

 裕貴君は、毎日数回以上母親の会社に電話をしていまいます。母親は何かしら嫌がらせの電話に思えて困り果てています。確かに母親からすれば「電話攻撃」に思ってしまうのでしょうが、裕貴君は不安ゆえに母親に救いを求めていると言えるでしょう。言い換えるなら、安心を求めて電話してしまうのです。ひとりで留守番することがとてもつらいのでしょう。特に用事があるわけではありません。「早く帰ってきて!」とそばにいて欲しいことを電話をかけることでアピールしているわけです。

 したがって、仕事中ですから職場への遠慮などもあり対応は大変でしょうが、電話がかかってきたら確かな安心を与えましょう。「いそがしいのに、なんで電話してくるの?」や「お母さんも働いて大変なのに!」などと感情をぶつけることはタブーです。「今、どうしているの?」「ちょうどあなたのことを考えていたところ」「声を聞けて良かったよ」「電話ありがとう、何かあったの?」と会話を続けてみましょう。「また不安になったらかけてきていいよ」と言って電話を終えて下さい。電話をかけることが親に迷惑をかけていることを本人はきっと自覚しています。それでもかけてしまう自分に対して、母親が普通に接してくれることに本人は満足し、そして安心を感じるのです。母親が電話を受け入れること、そして認めることで回数は減ってきます。母親が受けとめてくれる実感を感じれば、本人には迷惑をかけたくないと言う感情が働き、自ら電話を控え始めるのです。

 ただ、職場の理解がないと、母親が会社での非難の対象になってしまいます。不登校の状況などを詳しく伝えなければならないことはありませんが、わが子の調子の悪さを伝え、職場での理解を求める努力はして欲しいと思います。 また、全てを受け入れるのではなく、仕事の都合でたまには電話に出られないことがあることもしっかりと本人に伝えておくことも大切です。  

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